ITパスポート試験の大きな特徴は、出題範囲が「IT分野」だけにとどまらない点です。
経営戦略やマーケティング、プロジェクトマネジメントといったビジネス要素も含まれるため、単なるIT資格ではなく 「ビジネス+ITの総合基礎試験」 という位置づけになります。
ここでは、試験で出題される3つの主要分野を詳しく見ていきます。
1. ストラテジ系(経営・企業活動・法務)
ストラテジ系は、ITを取り巻く「経営戦略」や「企業活動」の基礎知識が問われます。
全体の約35%を占めるため、配点としても重要な分野です。
主な出題範囲
- 経営戦略
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- 企業活動の基本(財務諸表、損益分岐点、ROEなど)
- マーケティング(4P:製品・価格・流通・プロモーション)
- 経営分析(SWOT分析、PPM分析など)
- 情報戦略
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- IT投資計画、システム化計画
- DX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウド活用
- 法務
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- 知的財産権(著作権、特許権、商標権)
- 個人情報保護法や不正アクセス禁止法
- ITに関する契約(SLA:サービスレベルアグリーメント)
学習のポイント
ストラテジ系は文系分野が中心のため、理系出身者は慣れない用語に戸惑うことがあります。
特に 会計分野の計算問題(原価計算や損益分岐点分析)は苦手とする受験者が多いため、基礎的な計算式は繰り返し練習しておきましょう。
2. マネジメント系(プロジェクト管理・サービスマネジメント)
マネジメント系は、システム開発や運用における「管理手法」が中心です。
出題割合は約20%程度。文系・理系どちらにとってもやや馴染みの薄い分野かもしれませんが、実務では非常に重要です。
主な出題範囲
- プロジェクトマネジメント
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- 開発プロセス(ウォーターフォール、アジャイル)
- WBS(Work Breakdown Structure:作業分解図)
- リスク管理、品質管理、進捗管理
- サービスマネジメント
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- ITサービスマネジメント(ITILに基づく考え方)
- SLA(サービスレベル合意書)の重要性
- 障害管理、問題管理、変更管理
- システム監査
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- 内部統制、リスクコントロール
- 情報システムの有効性・効率性・信頼性を評価する方法
学習のポイント
マネジメント系では カタカナ用語や略語が多い のが特徴です。
「SLA」「WBS」「ITIL」など、略語の意味を理解せず暗記だけに頼ると混乱しやすいため、具体的な事例と関連付けて覚えるのがおすすめです。
3. テクノロジ系(IT技術・セキュリティ・ネットワーク)
テクノロジ系は、ITパスポート試験の中で最も「技術寄り」の内容です。
出題割合は約45%を占め、合否を分けるカギとなる分野です。
主な出題範囲
- ハードウェア・ソフトウェア
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- コンピュータの仕組み(CPU、メモリ、ストレージ)
- OSの役割、アプリケーションとの関係
- 仮想化技術(VMware、Hyper-Vの基礎概念)
- データベース
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- データモデル(リレーショナルデータベース)
- SQLの基礎(SELECT文など)
- 正規化の考え方
- ネットワーク
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- IPアドレス、DNS、ルーティングの基本
- TCP/IPモデルとOSI参照モデル
- 無線LANの仕組み
- セキュリティ
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- 暗号化方式(共通鍵暗号、公開鍵暗号)
- 認証技術(パスワード、多要素認証)
- マルウェア、フィッシング、サイバー攻撃の手口
- 情報セキュリティの三要素(CIA:機密性・完全性・可用性)
学習のポイント
テクノロジ系は理系寄りの内容で、文系出身者にとっては最大の壁となる分野です。
特に ネットワークの通信プロトコル や アルゴリズム問題 は初学者がつまずきやすいポイントです。
一方で、出題範囲は基本的な内容が中心のため、理解を積み重ねれば得点源にもなります。
分野ごとの出題割合と合格戦略
ITパスポートの出題割合はおおよそ以下の通りです。
- ストラテジ系:35%
- マネジメント系:20%
- テクノロジ系:45%
合格基準は「総合600点以上」かつ「各分野で300点以上」です。
つまり、どれか1分野を捨てることはできません。特に苦手分野を残したままだと、総合点が足りていても不合格になる可能性があります。
- テクノロジ系で確実に基礎点を稼ぐ
- ストラテジ系で経営や法務を理解し差をつける
- マネジメント系は用語を整理して取りこぼしを防ぐ
この3ステップを意識すると効率的です。
まとめ
- ストラテジ系:経営・法務・マーケティング
- マネジメント系:プロジェクト管理・ITサービス管理
- テクノロジ系:IT基礎技術・セキュリティ・ネットワーク
といった3つの分野から幅広く出題されます。
単なるIT知識ではなく、ビジネス全般に関わる総合力が求められる試験であることがわかります。
次回(第3回)では、合格率と難易度をデータで分析し、他資格との比較や学習時間の目安 について解説します。